2025年10月31日放送の「ドキュメント72時間」の舞台となるのは、兵庫県神戸市長田区・六間道商店街の近くにある多世代型住宅 「はっぴーの家ろっけん」。
高齢者、子ども、若者、外国人…。年齢も背景も異なる住人たちと、地域の人々が「誰かのため」の場ではなく、「私の居場所」として集うこの施設は、介護付き住宅という枠を超えた“暮らしのコミュニティ”です。
この記事では、施設の成り立ち・運営理念・日常の光景・番組が注目した理由などを詳しくまとめました。
「はっぴーの家ろっけん」について
基本情報


はっぴーの家ろっけん
- 住所:兵庫県神戸市長田区二葉町1丁目1-8(六間道商店街付近)
- 電話:078-646-2088
- 運営会社:株式会社Happy(代表:首藤義敬)
- 規模・構造:
建物:6階建て・緑色の外観
居室数:約40室(要支援~要介護5まで対応)
多世代交流スペース:1階にリビング・オープンスペースあり
背景と理念


「はっぴーの家ろっけん」を立ち上げた首藤義敬代表の原点には、神戸・長田というまちに根付く“人と人とのつながり”があります。
首藤代表が少年時代を過ごした長田は、かつて工場と町工場が入り混じり、人の声と金属音が響く活気あふれる地域でした。
ところが、阪神・淡路大震災や再開発を経るなかで、街の姿は変わり、「建物は建っても、人が戻らない」という現実を目の当たりにします。
「このままでは、街から“暮らしのぬくもり”が消えてしまう・・・」その危機感が、彼の中で大きく育っていきました。
空き家の増加、地域コミュニティの分断といった問題を前に、首藤代表が選んだのは、単に「住まいを提供する場所」ではなく、「人が共に生きる暮らしの場」をつくること。
介護や看護を必要とする人だけでなく、若者や子ども、地域の人々が同じ空間で自然に関わり合う、“共助のかたち”を実現しようと考えました。
その想いを象徴する言葉が、「ここは、おじいちゃんおばあちゃんのリビングなんです」という一言です。
この施設には、介護施設にありがちな“閉ざされた雰囲気”がありません。
あくまで生活の延長にある「リビング」であり、地域の誰もが立ち寄れる「家の延長線上の場」としてデザインされています。
首藤代表が目指したのは、支援やケアの場ではなく、「人生を共有する居場所」。
下町・長田の温かな人情を現代に再生するように、「はっぴーの家ろっけん」は、失われつつあった“暮らしのつながり”をもう一度灯し直した場所なのです。
日常の風景 ― 多世代・多背景が“同じ場”に集まる


施設内には、まさに“多様な暮らしの断片”が集まっています:
- リビングで宿題をする小学生。
- 午後の空き時間にPCを開く若いノマドワーカー。
- 赤ちゃんを抱えて立ち寄る近隣のママ。
- 車椅子の高齢入居者が子どもを見守る姿。
- 海外からの訪問者、アーティストが壁紙を手掛けた居室。
居室はフロアごとにテーマが異なり(例:昭和、アジアリゾート、アフリカなど)、その演出の中で「違和感=多様性として受け入れる」という価値観が貫かれています。
また、採用・入居のペースをゆっくりと定め、「このコミュニティになじめるか」を重視することで、機械的なサービス提供ではなく“質のある関係性”を育んでいます。
新しい試みとして注目されるポイント


- 介護+住まい+地域交流の統合モデル
一般的に住居と介護・看護サービスが別運営であるのに対し、ろっけんでは一体運営によりコストと仕組みを再構築。 - 多世代交流を前提とした“暮らし”設計
子ども、若者、高齢者、外国人までが自然に出入りする形式は、従来の高齢者住宅とは大きく異なります。 - 地域資源・空き家再生の視点
空き地を購入し「地域の人に何ができるか?」からワークショップを通して設計に参加を呼びかけたというプロセス。 - 採用・コミュニティ形成のコスト削減モデル
採用費0、入居募集費0でありながら入居希望が後を絶たないという点も注目されています。
利用希望者・地域にとってのメリットと考察
- 高齢者入居者:地域・世代を超えた交流の中で孤立を防ぎ、“人生の最後のステージ”を温かな環境で過ごせる。
- 地域住民・若者・子ども:高齢者だけの施設でなく、自分の時間や居場所を持てる新しい“第三の場”。
- 運営・地域側:空き家・空き地活用、地域のつながり強化、下町再生につながるモデルとなり得ます。
- 業界全体の視点:高齢化・人口減少時代において、「介護施設」ではなく「暮らせるコミュニティ」が鍵というメッセージが示唆されています。
まとめ


はっぴーの家ろっけんは、兵庫・神戸市長田区という下町の中で、“高齢者+多世代+地域”が共に暮らす大家族のような居場所を実践しています。
そこに暮らす人たちは、ただサービスを受ける側でもなく、ただ利用する場でもなく、“自分の場”を持った一員です。
今、介護や地域づくりが抱える課題が山積する中で、こうした“交える暮らしの場”は、次世代のモデルケースとして多くの示唆を与えるでしょう。
「違和感が3つ以上重なると、それが多様性になる」という首藤さんの言葉のように、様々な人が“隣り合って暮らす”ことが、この施設の核心だと思います。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

