今回は、しんめいPさんの著書『自分とか、ないから 教養としての東洋哲学』を紹介します。
『自分とか、ないから 教養としての東洋哲学』は哲学書としては異例の10万部越えを達成されています。
この本、私が仕事に悩み苦しんでいる時に、『からっぽ』になっても大丈夫(むしろ『からっぽ』の方が良い)と気付かせてくれました。
そして前に進む勇気をくれました。
もし貴方が現在、苦しい立場や逃げ出してしまいたい状況に陥っているのなら、『自分とか、ないから 教養としての東洋哲学』を是非読んでみて下さい。
私と同じように、きっと貴方の背中を押してくれると思います。
この記事では『自分とか、ないから 教養としての東洋哲学』を、実際に読んだ感想と内容の要約について書きました。
ぜひ最後までご覧ください。
『自分とか、ないから 教養としての東洋哲学』とは?
『自分とか、ないから 教養としての東洋哲学』は、しんめいPさんという方の著書です。
しんめいPさんについて知らない方が大多数だと思いますので、少し紹介しておきます。
しんめいPさんは、東京大学を卒業し、某一流IT企業に就職し、海外派遣やゲーム開発をするというエリート街道を歩んでいたものの、仕事でつまづき3年で退社。
そして鹿児島の離島での生活、お笑い芸人への挑戦など、自分探しを続けた結果32歳で無職となって離婚を経験。
その後、実家に戻り虚無感から5年間布団にこもる。
布団の中で東洋哲学に出会いnoteに綴ったところ、バズって書籍を出すことになる!!という異色の経歴を持たれています。
東洋哲学の本を出す方ってインテリで自分とはかけ離れた存在に感じますが、しんめいPさんには、なんだか親近感が持てますね〜
本の内容がすんなり入って来そうです。
本書は、東洋哲学の考え方を通して、自分とは何か、人生とは何かを問い直す一冊。難しいイメージのある東洋哲学ですが、著者の軽妙な語り口とわかりやすい解説で、誰でも気軽に読み進められます。
本のページ数は350ページ弱有り、一見読むのが大変そうに思えますが、内容は分かりやすく、構成もシンプルなのでグイグイ読めてしまいます。
読書が苦手な私でも、5時間で読み終える事が出来ました。
土日に読んで憂鬱な月曜日を少し楽にしたい時や、苦しいくて時は逃げ出したいと思っている時に『自分とか、ないから 教養としての東洋哲学』はそっと力を貸してくれる良書だと思います。
東洋哲学ってそもそも何なの?
東洋哲学とは、アジア地域、特に中国、インド、日本などの文化圏で発展した哲学のことを指します。西洋哲学に対して使われる言葉であり、思想の焦点や方法が異なることが多いです。
東洋哲学の特徴
- 全体的視点:個々の事物だけでなく、宇宙全体や自然、人間との調和を重視します。
- 実践的な知恵:生活の中で実際に役立つ教えや道徳を重んじ、行動や修行が重要視されます。
- 直観的な理解:論理的な思考だけでなく、体験や直観を通じた真理の探求が強調されます。
この本で紹介されている主な流派
- 道教(中国):自然との一体感や無為自然(何もしない、自然のままに任せること)を重視し、老子や荘子がその代表です。
- 仏教(インド、中国、日本など):苦しみからの解脱を目的とし、瞑想や智慧、慈悲を通じて悟りに至る教えです。釈迦(ブッダ)が創始者で、後に多くの宗派に分かれました(大乗仏教、禅など)。
これらの思想は、物質的な世界だけでなく、精神的・内面的な探求を重視する点で共通しています。
東洋哲学が教える「自分」の考え方
東洋哲学では、西洋哲学のように「自分」を独立した存在として捉えるのではなく、「自分」は周囲の人や環境とのつながりの中で形成されるものと捉えます。
例えば、禅では「無我」という考え方があります。
これは、自分という固定的な存在はなく、常に変化し続けるもの、という考え方です。
つまり、自分探しをするのではなく、今この瞬間を精一杯生きることが大切ということを教えてくれます。
簡単にまとめると東洋哲学は、とにかく楽になるための哲学なのだということです。
『自分とか、ないから 教養としての東洋哲学』では楽になるための東洋哲学の取り扱い方を、面白く簡単に解説してくれてます。
東洋哲学は難しいと思いがちですが、とにかく楽になるための哲学とだけ覚えていただければ、良いと思います。
『自分とか、ないから 教養としての東洋哲学』の要約
東洋哲学は基本的に「どう生きればいいか」がテーマです。
そして、東洋哲学には、その答えが有ります。
本書では、その答えを東洋哲学者7人の考えを例に出して、解説しています。
ここはネタバレも含むのでご注意ください。
「無我」 自分なんてない ブッダの哲学
この章では「虚無感」を完全に解決することができる、ブッダの教えについて書かれています。
それは、「これが自分だ」と言えるようなものは、ひとつもない、つまり「無我」ということに結論づけました。
人生の苦しみの根本的な原因、それは「自分」なのだ。
すべてが変わっていくこの世界で、変わらない「自分」を作ろうとすることこそが、苦しみや虚無感が生まれる原因だということです。
ブッダについて
ブッダ(仏陀)とは、紀元前5~4世紀頃のインドに生まれた仏教の創始者であり、「目覚めた者」を意味します。
ブッダの本名はゴータマ・シッダールタ(釈迦族の王子)で、後に仏陀と呼ばれるようになりました。
ブッダ生涯
- 王子として誕生:裕福な家庭に生まれ、若い頃は贅沢な生活を送っていました。
- 出家:人生の苦しみ(老い、病、死)に気づき、それらの原因を解明するために29歳で出家しました。
- 悟り:厳しい修行の後、瞑想によって35歳頃に「悟り」を開き、苦しみから解脱する方法を見出しました。
- 教えの伝道:悟りを開いた後、四諦や八正道といった教えを説き、人々が苦しみから解放されるための道を示しました。
- 入滅:80歳で入滅(死)し、涅槃(悟りを達成した後の安らぎの状態)に至ったとされています。
彼の教えは「中道」(極端な快楽や苦行を避ける道)を強調し、仏教として広まりました。
「空」 この世はフィクション 龍樹の哲学
ブッダが死んでから700年。
何故か仏教は鬼のように複雑な教えになってしまっていました。
ずっと続いていたこの問題を「龍樹」という一人の天才が解決してしまいました。
全200巻にまとめられていたブッダの教えを「空」という、わずか一文字にしてしまいました。
この世界はすべて「空」、つまり「フィクション」だということです。
「自分」とは、そもそも「からっぽ」だ。そして「からっぽ」だからこそが最高なのだ。
龍樹について
龍樹(ナーガールジュナ)は、2〜3世紀頃のインドの仏教哲学者で、大乗仏教の中観派(ちゅうがんは)の創始者とされています。
龍樹は仏教の重要な経典である『般若経(はんにゃきょう)』に基づいて、「空(くう)」の思想を体系化しました。
龍樹の教え
- 空(くう):すべての存在や事象は「固定的な実体を持たない」という考え。物事は相互依存して存在し、独立して存在するものはないと説きました。
- 中観派の哲学:空を深く理解することで、執着や誤解から解放される道を示しました。これは極端な存在論や非存在論のどちらにも偏らない「中道」の立場です。
龍樹の思想は、後の大乗仏教の発展に大きな影響を与え、特に中国やチベット、日本の仏教思想に大きな影響を及ぼしました。
「道」 ありのままが最強 老子と荘子の哲学
インドでは「空」の哲学が生まれましたが、中国では「道(タオ)」の哲学が生まれました。
「空」も「道」も「この世界はフィクションだ」「すべてのものはつながっている」という哲学です。
しかし「空」と「道」はゴールが正反対でした。
インドの哲学はこの世界から「解脱」するのがゴールで、中国の哲学はこの世界を「楽しむ」がゴール。
なので中国の「道」の哲学からは、「どうやったら人生がうまくいくか」という処世術も導き出すことができます。
「道」の代表的な哲学者は老子と荘子です。
老子について
老子(ろうし)は、中国古代の思想家で、道教の祖とされる人物です。彼の生涯については詳細が不明ですが、紀元前6〜5世紀頃に活躍したとされています。
老子の名は「古代の賢者」という意味を持ち、道教の代表的な書物である『道徳経(どうとくきょう)』の著者とされています。
老子の教え
- 道(タオ):宇宙の根源的な原理や自然の流れを意味し、すべてのものは「道」によって生まれ、運ばれます。老子は、人間が「道」に従い、自然のままに生きることを説きました。
- 無為自然(むいしぜん):何も無理に行わない、自然のままに任せるという教え。これは調和と柔軟さを重視し、無理に何かを制御しようとすることへの批判を含みます。
- 柔弱勝剛強(じゅうじゃくしょうごうきょう):柔軟で弱いものが、かえって強いものに勝つという逆説的な教え。
老子の思想は、後に道教として体系化され、中国文化や思想に深い影響を与えました。
荘子について
荘子(そうし)は、戦国時代の中国の思想家であり、道家思想を発展させた人物です。
荘子の著作『荘子』は、老子の「道」の教えをさらに拡充し、道教思想の基盤を築きました。
荘子は、自由で無限な心の境地を追求し、世俗の価値観や規範からの解放を強調しました。
荘子の教え
- 逍遥遊(しょうようゆう):外的な束縛や制約から解放され、心を自由に保つ生き方を説きました。何にもとらわれず、自然と調和して生きることを理想としています。
- 相対性の思想:物事の善悪や正誤、大小などは絶対的ではなく、すべては相対的であると考えました。したがって、固定的な価値観に縛られることなく、柔軟に生きるべきだと主張しました。
- 胡蝶の夢:荘子が夢の中で蝶になり、目覚めた時に自分が蝶か人間か分からなくなったというエピソード。これは現実と夢、自己と他者の境界が曖昧であることを象徴しています。
荘子の思想は、老子の「無為自然」の教えを発展させ、より個人の内面的自由や自然との一体感を追求する内容となっています。
「禅」 言葉はいらねえ 達磨の哲学
そもそも「空」や「道」という「言葉を超えた」境地に辿り着けるのでしょうか?
その一つの答えが「禅」なのです。
「禅」は静かなイメージですが「考えるな、感じろ」「言葉を捨てろ」という激しい教えでびっくりしました。
達磨について
達磨(だるま)は、6世紀頃のインドの僧侶で、禅宗(禅仏教)の始祖とされています。
達磨は仏教の教えを広めるために中国へ渡り、禅の修行法を伝えました。禅は、経典や教義に頼らず、座禅や瞑想によって直接的に悟りを求める修行法です。
達磨の教え
- 壁観(へきかん):達磨は、壁に向かって座禅をする「壁観」と呼ばれる修行を行い、心の静寂と集中を通じて悟りに至ることを説きました。これは、形式的な儀式や知識ではなく、自己の内面を直視することの重要性を強調しています。
- 直指人心(じきしにんしん):心そのものに直接向き合い、自己の本質を見つめることによって、仏性(悟りの本質)を体験するという教えです。
- 不立文字(ふりゅうもんじ):文字や経典に頼ることなく、直接的な体験を重視する禅の基本的な理念です。悟りは言葉では表現できないものであり、自らの修行を通じて得るべきものとされています。
達磨の教えは後に禅宗として発展し、中国から日本を含む東アジア全域に広まりました。彼の像は日本でも有名で、禅の精神を象徴する存在となっています。
「他力」 ダメなやつほど救われる 親鸞の哲学
仏教は日本に伝わると、大きく変化します。
大きく変化させた一人が「親鸞」です。
「親鸞」の「浄土真宗」ではなんと「空」に向かう方法を解くのではなく、「空」のほうが、こっちに来ると解きました。
つまりは「ダメなヤツほど、救われる」という教えです。
親鸞について
親鸞(しんらん)は、鎌倉時代の日本の仏教僧で、浄土真宗(じょうどしんしゅう)の開祖です。
親鸞は、師である法然の教えを受け継ぎながらも、独自の視点で阿弥陀仏の本願に依る「他力本願」を強調し、万人が救われる道を説きました。
親鸞の教え
- 他力本願(たりきほんがん):自力での修行や善行ではなく、阿弥陀仏の力によって救われるという考え方。親鸞は、自らの修行や能力に頼ることなく、ただひたすらに阿弥陀仏の救いを信じ、念仏(「南無阿弥陀仏」と唱えること)を唱えることが重要であると説きました。
- 絶対他力:親鸞は、人間は煩悩に囚われており、自力での悟りや救済は不可能であると考えました。したがって、阿弥陀仏の慈悲と力だけに全幅の信頼を置く「絶対他力」の教えを広めました。
- 悪人正機(あくにんしょうき):特に「悪人こそが阿弥陀仏の救済の対象である」という考え方です。善人よりもむしろ、自らの罪深さや限界を自覚している「悪人」こそが、阿弥陀仏の慈悲にすがるべきだと説きました。
親鸞の教えは、形式的な修行や戒律を重視せず、すべての人が救われる道を強調したことで、幅広い人々に支持され、浄土真宗は日本で広く信仰される仏教宗派となりました。
「密教」 欲があってもよし 空海の哲学
「密教」とは「秘密仏教」の略です。
そして「密教」は超ポジティブ!!「生命」を大肯定する哲学だったのです。
つまりは欲望を持ってよし!!という教えです。
空海について
空海(くうかい)は、平安時代初期の日本の僧侶であり、真言宗の開祖として知られています。
空海は804年に唐(中国)へ留学し、密教(ミッキョウ)を学んで帰国後、日本に密教を広めました。
空海は、日本仏教や文化に多大な影響を与えた重要な人物です。
空海の教え
- 真言密教:空海が伝えた密教は、仏の教えを秘密の教えとして伝えるもので、真言(神秘的な言葉)や儀式を通じて悟りに達する方法を説きます。大日如来を中心とした宇宙観を持ち、悟りへの道は誰でも実践可能であると考えました。
- 即身成仏(そくしんじょうぶつ):この世で生きながらにして仏となることができる、という教えです。修行を通じて、肉体と精神を使って現世で悟りを実現できると説きました。
- 三密(さんみつ):密教の修行の核心で、身(身体の動作)、口(言葉や真言)、**意(心の集中)**の三つの行いを一致させることによって、仏と一体化し、悟りに到達するとされます。
空海はまた、書道や詩文にも優れ、文化的にも大きな足跡を残しました。
空海が創建した高野山は、今も真言宗の聖地として有名です。
空海は、日本文化や精神に深い影響を与え続けており、「弘法大師(こうぼうだいし)」として広く尊敬されています。
まとめ
『自分とか、ないから 教養としての東洋哲学』を読むことによって、
- 苦しい時、どうしたら救われるのか?
- どうやったら人生がうまくいくか?
- 自分探しをする代わりに何をするべきか?
- 東洋哲学が人間関係に与える影響は何か?
- 東洋哲学を学ぶことで、どのように心の解放ができるのか?
を学ぶことができます。
冒頭にも書きましたが、この本、私が仕事に悩み苦しんでいる時に、『からっぽ』になっても大丈夫(むしろ『からっぽ』の方が良い)と気付かせてくれました。
そして前に進む勇気をくれました。
もし貴方が現在、苦しい立場や逃げ出してしまいたい状況に陥っているのなら、是非この本を読んでみて下さい。
私と同じように、きっと貴方の背中を押してくれると思います。
この本には本当に救われました。
弱っている時に読むと、本当に救われます。
超おすすめの哲学書です!!
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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