茨城県の深い山奥に見える巨大な「プラント施設」。
一見すると工場のようなその場所で出会ったのは、家族を想い、50年前に“起業”したご主人のライフストーリーでした。
2026年1月18日放送の「ポツンと一軒家」で舞台となったのは、茨城県久慈郡大子町の上郷堆肥組合。
森の中にひっそりと広がるこの土地で、ご主人は奥さまと息子さんへの思いを胸に、生業である酪農と堆肥生産に向き合ってきました。
本記事では、その歩みと施設の背景、そしてポツンと一軒家として描かれた理由を紹介します。
今回の「ポツンと一軒家」はここ!
上郷堆肥組合とは


上郷堆肥組合は、茨城県北部・大子町上郷地区にある家畜ふん尿の共同処理施設を中心とした堆肥生産組合です。
平成8年(1996年)に地域の酪農家らが協力し、畜産農家3戸で設立され、以後地域農業を支える重要な役割を担ってきました。
主に乳牛のふん尿や稲わら・米ぬかなどを原料に、発酵・堆積を経て高品質な有機堆肥を生産しています。
この取り組みは「草地畜産活性化特別対策事業」の助成を受けて実施され、現在まで安定的に稼働を続けています。
堆肥は袋詰めで販売され、町内のリンゴ園や水稲、ハウス野菜、花卉(パンジーやトルコギキョウなど)といったさまざまな農産物の生産に利用され、地域の土づくりに貢献しています。
もともと農家の「春先に発酵した堆肥が不足する」という要望に応える形で始まったこの活動は、肥料供給という役割だけでなく、中山間地域の農家たちの暮らしを支える存在でもあります。
販売される堆肥は、袋入り(20L)や2トンダンプ単位での取引など、多様な需要に応える体制となっています。
ポツンと一軒家として映された“施設とご家族”
番組で捜索隊が最初に見つけたのは、森の中の巨大な建築群。
その様子に「堆肥小屋では?」という反応もありました。実際に高台の森の中にあるこの施設は、畜産と堆肥生産が結びついた複合的な場所で、周囲の風景からは簡単にはその意図が読み取れません。
捜索隊が施設近くの集落で話を聞いたところ、そこに住む酪農家のご主人の自宅が麓にあるとわかり、まずはその家を訪ねることになりました。
自宅周辺の牛舎群からわかるように、ご主人は長年畜産と酪農に携わってきた人物であり、そこからさらに山林を越えると、森の中にぽっかりと開けた広大な敷地に施設が姿を現しました。
ご主人は、高校卒業後すぐに家業を継ぎ、自分で生き方を選び取りながら農業と酪農を起業したと語ります。
初めは家族8人を支えるため、そして地域への貢献を胸に、決して平坦ではない道を進んできました。
「後ろを見ると必ず妻がついてきてくれた。だから安心して前を向いて進めた」と振り返るご主人の言葉には、愛と支え合いが込められていました。
こうしたご主人の人生観は、単に施設が山奥にある理由以上に、その場所が「ポツンと一軒家」として選ばれた背景を物語っています。
耕作地の少ない中山間地域で、畜産と堆肥生産を結びつけるという挑戦は、地域の農業活性化につながる重要な取り組みだったのです。堆肥組合としての歩みは、単なる農業の延長線ではなく、農家同士の協力と地域ニーズへの柔軟な対応が生んだ成果でもあります。
こうした取り組みが続いているのは、地域の農家と利用者双方からの信頼があるからにほかなりません。
周辺・上郷の「暮らし」と地域性

茨城県久慈郡大子町は、林野率が高く、農林業と観光が基幹産業となっている地域です。
山々に囲まれたこの町は、奥久慈地区の中心として、米やりんご、茶など地域資源豊かな産物が育まれています。
また、農家が分散して点在する中山間地の特徴から、堆肥生産や畜産処理施設は複数設けられ、土づくりが農産物づくり全体の基盤となっています。
こうした地域の背景があってこそ、上郷堆肥組合のような“森の巨大プラント”が成立し、地域に根ざした活動として継続してきたのです。
まとめ:上郷堆肥組合は「農業の未来をつなぐ場所」

「ポツンと一軒家」で描かれた上郷堆肥組合の姿は、単に“森の奥にある巨大な施設”というだけではありません。
そこには、家族の支え合い、地域の農業への思い、そして土づくりという循環の哲学が息づいています。
高齢化や農地減少が進む中山間地で、このような取り組みが続いている事実は、地域社会の強さと農業への深い愛情の証でもあります。
茨城県久慈郡大子町上郷の上郷堆肥組合は、農家同士の協力から始まり、地域の耕種農家のニーズに応えて発展してきた組織です。
今もなお、その活動は農業の「基盤=土づくり」の重要な役割を果たし、地域の未来を支えています。ポツンとした施設の奥にあるストーリーは、そんな希望と継続の物語でもあったのです。
今回も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

